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08/08/13 ガレの植物・ガレの昆虫
 
06/08/05 ガレの植物・ガレの昆虫
 
 
題名

ガレの植物・ガレの昆虫

 

ガレといわれたら、一番にどんな作家だと思われるでしょうか。

多くの方は漠然と「アール・ヌーヴォーのガラス作家」と思われるでしょう。少し詳しい方になると「花の模様の花瓶やランプ」色や形も思い描かれるかもしれません。私たちがお話をさせていただくお客様には「ガレと言ったらトンボだよ」あるいは「昆虫の模様!」と昆虫を特徴と位置づけられる方も多いようです。風景を描いた作品もたくさん作られているのですが、自然を愛し、命あるものへ温かいまなざしをむけたガレにとって植物と昆虫は二大テーマと言って差し支えないものでしょう。しかしながら、ガレの植物と昆虫に対するアプローチのしかたはかなり違ったものでした。


ガレはアール・ヌーヴォーを代表するガラス工芸家として日本でも有名ですが、同時に植物学者としても活躍していたのです。1885年には「フランス植物学会」の正式会員となり数多くの論文も発表していました。学者としての眼をもったガレですから作品の中にも多くの珍しい植物を登場させました。バラやベゴニアと言った園芸品種はもとより、アフリカのクンシランや南米のカトレア、日本の紫陽花や瓢箪も描いています。数えきれないほどの植物がガレの作品を飾りましたが、これらにはある共通した特徴があります。それは植物図鑑の挿し絵のごとく実物に忠実に描かれたことです。些細な特徴から品種を同定し、区別する。植物学者ガレが自らの作品に描く花にも妥協を許さなかったことは作品を見れば一目瞭然です。


花びらの質感や茎に生えた細かな繊毛までをも再現して見せたガレは昆虫を描いた作品もとても丁寧につくりこんでいます。けれども植物の描き方に比べ昆虫の表現はかなりアバウトです。蝉や、バッタはどの種類も形態が似ているので難しいにしても、蝶やトンボは模様や色でもう少し表現できたはずです。なによりガレの描く昆虫では、たとえばトンボの胴体が優雅な曲線を描いたり、蝶の触角はクルクルとカールしていたり、学者であるか否かとは違った、子供でもおかしいと気付くような確信犯的デフォルメが目立ちます。幼少のころ親しんだグランヴィルの絵本や、日本の鳥獣戯画からの影響もあるかもしれません。けれども男の子だったら誰もが遊んだ虫たちだからこそ、ガレに悪戯心を持たせたのではないでしょうか。


日本で最も早くガレの芸術に目をつけた偉大な収集家、故・菊地保成氏のコレクションは今日そのすべてがサントリー美術館に収蔵されています。唯一の例外として故人が元気なころ手放してしまった逸品が北澤美術館蔵の「蜉蝣に蝉文花器」です。手放した理由が実にユニーク。「空を飛ぶトンボの胴体がS字型なのはおかしい」「トンボとセミの触角がカールしているはずがない」そして「ガレがこんないい加減なものを描くはずがない」と結論づけ手放してしまったのです。はやまったことをしたものです。故人の最もお気に入りであった1889年万博出品作である「アモールは黒い蝶を追う」にはバリエーションといえる同形の作品(こちらも万博出品作)があり、これにはカミキリムシが長い触覚をこれでもかというほどカールさせながら空を飛ぶ姿が刻まれてるのです。どちらにしても菊地氏のコレクションが海外に流出することもなく美術館で鑑賞することが出来るということはとてもありがたいことです。

(本文と写真は直接関係ありません)


2006/08/05


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